京都の至高インストバンド「e;in」新作リリースインタビュー

INTERVIEW

京都を拠点に活動するインストバンド「e;in」(アイン)が、新作「Vodka EP」を2018年11月9日にリリースする。

同じくインストバンドであるLOW-PASSのメンバーも擁するe;inに、インタビューを敢行。Friend of Mine Recordsからリリースとなる新譜の制作についてや、バンド活動の裏側についても伺った。

e;in

e;in

e;in (アイン)

yodo junichi / gt
kanazawa takayuki (LOW-PASS) / gt
kouno takumi / dr
wakahara naosuke / ba

京都を活動拠点にする4ピースインストゥルメンタルバンド、ドラムの河野、ギターの淀を中心に結成。2010年にLOW-PASSでも活動する金澤と若原が加入し現体制となる。インスト/ポストロック的なサウンド軸に繊細でテクニカルなドラムと弦楽器の独特のメロディラインを特徴する。バンドとしての活動拠点を広げるために、Friend of Mine より「Vodka EP」をリリースして、ツアーを行う予定。今回のEPのアートワークは、my letterのおざわさよこ氏による力作である。(レーベルサイトより抜粋)

ライブをすることに対して前向きな意識に変わりましたね。

e;inを知らない読者にも向けてお伺いしたいのですが、バンドはどんな経緯で結成されたんですか?

元々は僕と河野(Dr.)を中心にライブをしない、”楽曲制作のためのバンド”を作ったのが始まりです。
当時は別のバンドでの活動やプライベート等が忙しく、ライブのための時間はなかなか作れないが曲は作りたい、ということでDTMを使ってアコースティック主体の楽曲制作をしていました。その後、もう一人ギターを入れたいってなってた時に、河野が当時やってたバンドのメンバーがLOW-PASSのベースもしてて、そこから金澤(Gt.)を紹介してもらい加入。その後当時のベーシスト脱退に伴い、金澤の紹介で若原(Ba.)に声かけて加入してもらい、現メンバーになりました。それが2010年ぐらいですね。

e;inとしては、どんなバンドやアーティストに影響を受けたと言えますか?

金澤

初期のアコースティック主体のときは、emancipatorやSteve Reichで、ポストロックとかよりはミニマル、ヒップホップ、フォークがベースでした。エレキ主体に移行した1stアルバム(「season for reading」)あたりはMice ParadeとGhosts & Vodkaを足して割った、みたいなこと言ってましたね。今作の制作中はDeath Cab for Cutie、The Appleseed CastやAmerican Footballあたりを皆で聴いてました。

新作「Vodka EP」は、全体を通して清涼感や多幸感が溢れるサウンドが印象的でした。今作の制作にあたってEP全体のテーマやイメージなどはありましたか?

金澤

聴いた時に何らかの映像というか、イメージが頭に浮かぶような楽曲にしたいとは常々考えていますが、今回はなるべく過去作品よりギターやドラムのフレーズを盛りすぎずに、聴きやすい耳馴染みの良い作品にしたいとは思っていました。ギターもあまり歪まさず、クリーン/クランチを意識して、あとは前作までよりリバーブ感出すようにしましたね。あとは変拍子は入れない。

今作の制作過程であった印象的なエピソードなどがあれば教えてください。

金澤

伝わらないかもしれませんが、”vodka”という曲で中盤のドラムフレーズにjamblock(カウベルに近い打楽器)の音が「コッコッ」て入ってるんですけど、録りの時にクリック鳴らしてたんですが音が全く一緒で、リズムにズレたらすぐわかるんですよね。だからjamblockを叩いてクリック消すっていうゲームみたいになってました。僕らは笑ってましたけど、ドラムの河野からしたらめちゃくちゃ難しいフレーズで苦行みたいになってました。
ドラマーの方は一回やってみて欲しいすね。結構難しいらしいです。友達のドラマーは、河野が叩いてるの見て「気持ち悪い」って言ってました(笑)

今回は2016年リリースのcowbellsとのスプリット(「POST SPLIT EP」)以来の作品となるかと思いますが、前作リリースから今までを振り返ってどんなことがありましたか?

金澤

前作のリリース後は、けっこうライブしたんですよね。e;inとしてはですけど。そしたら「1年も新曲作ってない!」てなって、そこからまた1年間引きこもったんです。曲を作るためっていうのもあったけど、僕らのスタンス的に無理しちゃったというか、単純にライブすることに疲れちゃって…。
でも、cetowとAGATHAが企画に呼んでくれたり、山口のElephantが廃校でのイベントに誘ってくれて、めちゃくちゃ楽しかったんですよね。それで「やっぱライブやりたい!」って気持ちになってそこから曲作るペースが上がって。「ライブもやっていこう」ってなったけど、その頃にはもうあまりライブに誘われなくなっちゃった…(笑)
だから今回の作品を出して、レコ発もして、「e;inやってますよ!」っていうアピールしないとなって。ライブをすることに対して前向きな意識に変わりましたね。これは僕たちにとっては大きな変化です。

自由気ままに自分たちのペースで長く続けていくことですね。

「Vodka EP」は、Friend of Mine Recordsからリリースとなりますが、レーベルとの出会いや関係性についてもお訊きしたいです。

金澤

Friend of Mine Recordsは、元々僕が別でやってる「LOW-PASS」ってバンドで、フランスのfago.sepiaというバンドとスプリット作品をリリースさせてもらった経緯があって。それからのお付き合いで、個人的には10年ぐらいになります。
LOW-PASSでは、Friend of Mine Recordsが招聘するバンドのツアーの京都公演とか手伝わせてもらったり、そうこうしていく過程でMutiny on the Bountyの来日時にe;inで京都公演をサポートさせてもらって。その時にe;inのメンバーがFriend of Mine Recordsに興味もってくれたのもあって、リリースをどうしようか考えていた時に「できるならFriend of Mine Recordsから出したいね」ってなって。それでツネさん(レーベルオーナー 佐藤氏)に相談したって感じですね。そしてリリースを快諾していただきました。

インストバンドとして、他のバンドにはないポイントを挙げるとしたらどんな所ですか?

差別化かどうかは分かんないですけど、自分たちとしては曲の中で主張し過ぎず、尚且、耳に残るようなメロディー感と一曲の中での物語性を大事にしてます。歌詞がないインストでも、聴いた時に何らかの映像というかイメージが頭に浮かぶような楽曲制作は心掛けてますね。

バンドとして大きく目指しているものはありますか?

河野

大きく目指しているとかは特にないですが、一人でも多くの人に興味をもってもらいたい、という部分は常に思っています。なので、忘れられないようにマイペースでもいいから続けていく事を目指しています。

バンド活動にあたって「ここだけはブレたくない」というものがあれば教えてください。

河野

自分たちの気持ちの向くままに活動することですね。楽曲制作でも試したい案が出ればかなり時間がかかっても試しますし、メンバー間で「それはない、あれはない」とかも基本的には言わないです。どうしても譲れないってなったらそのメンバーの案を尊重して、その上でそれを良くしていく方法をメンバー全員で考えます。
日々の生活と音楽活動を両立するのは結構大変やと思うんですよね、e;inはそれなりに年齢も重ねてきてるし、皆仕事もあるし、妻子持ち2人いるし、若かったときとは環境もだいぶ違う。そんな中で少しでも「楽しくない」とか「疲れた」とか感じてしまったら、長く続けられるものも長く続けられなくなってしまうかな、と。
だから長く続けるために自由に気のままに活動していくのが自分たちには大事なのかな、と考えてます。結局さっきの質問に繋がってしまうんですけど、ブレたくない部分は自由気ままに自分たちのペースで長く続けていくことですね。

レーベルプロフィールには「楽曲制作に重視していることもあり、ライブ活動は少ない」ともあり、e;inでのライブは比較的絞って活動されているかと思いますが、どのような理由で楽曲制作を重視されるようになったのでしょうか?

元々ライブより楽曲制作目的で結成したってのもありますが、メンバー皆が飽きっぽいので常に新しい楽曲求めてるっていうのがでかいかな。ライブが少ないことに関しては家族や仕事、メンバーのプライベートをできるだけ尊重してそれを成り立たせた上でバンドがあるので、ライブで丸一日空けたりしないといけなかったり、仕事早上がりとかってなると厳しいことが多いので、どうしてもライブ活動には制限かかっちゃいます。
でも、楽曲制作はPC上でやりとりしながらやっていけるので、仕事終わってから家でできるし、家族が寝てからでもできます、僕たちは基本メンバー揃ってスタジオで曲作るってのがほぼないので、データのやりとりで自分たちのパートを録音してLINEでこれは残しときたい、とかここはこんなイメージで、とか連絡しながら構築して。一通り完成したら一回スタジオでやろうか、て感じなんですよね。
いつでも良いフレーズできたらすぐ録音しといて、次これやるし、で、もう制作に入っちゃう。それの繰り返しでライブよりも曲作りが優先されてる感じですね。

過去にはアメリカのレーベルからのリリースや中国のコンピレーション参加などもされていますが、どのような反響がありましたか? また、海外レーベルとのやり取りで得たもの・学んだことなどがありましたら教えてください。

金澤

嬉しいことにしっかりした感想をメールでくれる方や、「ライブしに来ないのか?」っていう問い合わせのメールはいろんな国の方からちょこちょこ来るようになりました。僕たちが関わらせてもらったmeatcubeやsango recordsは日本語がある程度通じる人たちで、やり取りは困ることはなかったですね、金銭的な部分はpaypalで完結できるし。まぁ海外リリースって言っても僕たちのようなバンドはフィジカルも量作れないですし、結局のところデジタル・ダウンロードで採算取っていく形ではありましたね。そういう意味ではやはりフィジカルを手にとってもらうにはライブしなきゃなって…。
でも、なかなか海外にはライブ行けないですしね。僕たちのスタンスでは難しいところで悩ましいです。やっぱYouTubeとか活用しなきゃですかね。僕らは映像作品とかも少ないので。

今後の活動予定がありましたら、ぜひ最後に教えてください。

金澤

リリース後の2018年11月25日に京都GROWLYでレコ発を、Friend of Mine Recordsが招聘するイタリアのValerian Swingの来日と合わせてやります。その後は12月に福岡、1月に山口、3月に東京などでレコ発やらせてもらいます。他も数箇所は考えてますが、なかなかライブできないので、すごいゆったりしたスケジュールです(笑)
年明け以降になりますが、カセットテープでのリリースも視野に入れています。これに関してはまだ構想段階ですが、良い形にできればいいなぁと。

京都という地でしっかりと足取りを重ねるe;inのメンバーたち。来年には新作「Vodka EP」リリース後には各地をライブで周るとのことなので、見逃すべからずです!

INFORMATION

e;in

e;in

Vodka EP

2018年11月9日
全5曲収録
国内盤 FOMR-0071
¥1,300 + 

  1. Grass Wonder
  2. Montjeu
  3. Gold Allure
  4. Vodka
  5. Arrogate

http://rootsandroute.net/